「遺留分」とは?相続の最低保障分について、やさしく解説
はじめに|「遺留分」とはどんな制度?
相続や遺言について調べていると、よく出てくる言葉が「遺留分(いりゅうぶん)」です。
遺留分とは、法律で保障された「最低限の相続分」のこと。
たとえ遺言書で「全財産を長男にあげる」と書かれていても、配偶者や他の子どもなどの相続人は、一定の割合について「それはさすがに不公平です」と請求できる権利を持っています。
つまり、遺留分は「相続トラブルの防波堤」のような制度です。
一部の人だけが有利になるような遺言があっても、他の相続人の最低限の取り分を守る役割を担っています。
この記事では、相続の専門家ではない方にも分かりやすいように、「誰にどれくらい遺留分があるのか」「どんなときにトラブルになるのか」をやさしく解説していきます。
遺留分がもらえるのは誰?基本の範囲を確認
遺留分の権利がある相続人・ない相続人
遺留分の権利があるのは、法定相続人(法律で相続人とされる人)のうち、次の人たちです。
| 配偶者(夫・妻) | あり |
|---|---|
| 子ども(またはその代襲者) | あり |
| 直系尊属(父母・祖父母など) | あり(子どもがいない場合のみ) |
| 兄弟姉妹 | なし |
とくに重要なのが、兄弟姉妹には遺留分がないという点です。💦
たとえば、相続人が兄弟姉妹だけのケースで、
- 「全財産を慈善団体に寄付する」
- 「親しくしていた友人にすべてあげる」
といった遺言があったとしても、兄弟姉妹は「遺留分」を理由に取り戻すことはできません。💦
✅ 配偶者・子ども・親には遺留分があるが、兄弟姉妹には遺留分がない──ここを押さえておくだけでも、相続のイメージがぐっとつかみやすくなります。
遺留分の割合|まずは「全体の遺留分」を知ろう
全体としてどれくらいの遺留分があるのか
遺留分は、「法定相続分(本来の相続分)」をベースにして、一定割合が決められています。
まずは「相続財産全体に対して、どれくらいの割合が遺留分として守られるのか」を見てみましょう。
| 配偶者+子ども | 遺産の 1/2 |
|---|---|
| 配偶者のみ・子のみ | 遺産の 1/2 |
| 直系尊属(親)のみ | 遺産の 1/3 |
| 兄弟姉妹のみ | 遺留分なし |
この「全体の遺留分」を、さらに法定相続分に応じて各相続人ごとに分けていく、というイメージです。
ステップで見る遺留分の考え方
- ステップ1:相続人の構成を確認する(誰が相続人か)
- ステップ2:相続財産全体に対する「全体の遺留分」を計算
- ステップ3:各相続人の法定相続分に応じて、個別の遺留分を割り振る
少し難しく感じるかもしれませんが、次の具体例を見るとぐっと分かりやすくなります。
具体例で理解する「遺留分」の計算
例1:配偶者と子ども1人の場合
前提条件
- 遺産総額:3,000万円
- 相続人:配偶者と子ども1人
- 法定相続分:配偶者1/2、子ども1/2
ステップ1:全体の遺留分を出す
遺留分全体 = 遺産総額 × 1/2
→ 3,000万円 × 1/2 = 1,500万円
ステップ2:法定相続分に応じて分ける
- 配偶者の遺留分:1,500万円 × 1/2 = 750万円
- 子どもの遺留分:1,500万円 × 1/2 = 750万円
つまり、遺言で「全財産を妻に」と書かれていても、子どもは最低750万円を請求できることになります。
例2:子ども2人だけの場合
前提条件
- 遺産総額:4,000万円
- 相続人:子どもA・子どもBのみ(各1/2)
計算の流れ
1️⃣ 遺留分全体=4,000万円 × 1/2 = 2,000万円
2️⃣ 各子どもの遺留分=2,000万円 × 1/2 = 1,000万円ずつ
遺言で「全財産を長男に」とされていても、次男は1,000万円を遺留分として請求できることになります。
例3:親(直系尊属)のみが相続人の場合
子ども・配偶者がいないケースでは、親などの直系尊属が相続人となります。
- 遺産総額:2,000万円
- 相続人:父・母(各1/2ずつ)
1️⃣ 遺留分全体=2,000万円 × 1/3 ≒ 666万円
2️⃣ 各親の遺留分=666万円 × 1/2 ≒ 333万円
例えば、子どもがいない夫婦で、夫が亡くなり「全財産を友人へ」という遺言があっても、両親が健在であれば、それぞれ約333万円を請求できる可能性があります。
「遺留分侵害額請求」とは?(旧称:遺留分減殺請求)
2019年の民法改正で名称と中身が少し変わった
以前は「遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)」と呼ばれていた制度は、2019年の民法改正により、現在は「遺留分侵害額請求(いりゅうぶんしんがいがくせいきゅう)」という名前に変わりました。
一番大きなポイントは、「お金で請求するのが基本」になったことです。
遺留分侵害額請求の基本イメージ
- 「本来もらえるはずの遺留分」と「実際にもらえた分」を比べる
- 足りない部分(侵害された額)を、お金で請求する
- 「不動産そのものを返してほしい」とは言えないのが原則
手続きの大まかな流れ
- ① 相続財産・生前贈与などを含めて全体を確認する
- ② 自分の遺留分がいくらになるか計算する
- ③ 弁護士などを通じて「遺留分侵害額請求書」を内容証明などで送付
- ④ 話し合い(協議)で解決を目指す
- ⑤ まとまらなければ家庭裁判所で調停・訴訟へ
✅ 遺留分侵害額請求には期限があります。
「相続が始まり、侵害されたことを知った日から1年以内」に行使する必要があります。
また、相続開始から10年が経つと権利そのものが消滅してしまいますので、気づいたら早めに専門家に相談することが大切です。
遺留分の対象になる財産・ならない財産
遺留分の計算に含まれる財産
- 預貯金
- 不動産(土地・建物)
- 株式・投資信託などの有価証券
- 一定の条件を満たす生前贈与された財産(特別受益)
遺留分の対象にならないもの
- 香典・弔慰金など、葬儀に関わるお金
- 受取人が相続人本人になっている生命保険金(一部例外あり)
- 純粋な個人的な交際費・立替金など(性質による)
また、生前贈与がある場合は要注意です。
特に、
- 特定の子どもにだけ多額の生前贈与をしていた
- 自宅の名義を一人の子どもに移していた
といったケースでは、「特別受益」として遺留分計算の対象に含まれることがあります。
生前贈与がある場合の遺留分計算(応用例)
例:父が死亡。遺産1,000万円+生前贈与500万円(長男へ)
前提条件
- 相続人:長男・次男の2人
- 遺産:現金1,000万円
- 生前贈与:長男が生前に500万円を受け取っていた
ステップ1:相続財産総額を出す
相続財産総額 = 1,000万円 + 500万円 = 1,500万円
ステップ2:遺留分全体を計算
遺留分全体 = 1,500万円 × 1/2 = 750万円
ステップ3:各相続人の遺留分を出す
子ども2人なので、それぞれの遺留分は 750万円 × 1/2 = 375万円
ステップ4:生前贈与分を考慮する
- 長男はすでに500万円を受け取っている → 遺留分375万円はクリア済み
- 次男は何ももらっていない → 遺留分375万円を主張できる立場
この場合、長男は「もらい過ぎ」と評価される部分が出てくるため、
次男は長男に対して一部を金銭で請求できる可能性があります。
遺留分トラブルでよくあるパターン
| 「全財産を特定の子に」 | 他の兄弟が遺留分侵害額請求を行う |
|---|---|
| 「生前贈与が多い」 | 特定の相続人だけが有利になり、他の相続人が不満を抱く |
| 「相続財産が不動産のみ」 | 現金が足りず、金銭で支払うのが難しくて調停になることも |
| 「期限を過ぎた」 | 遺留分の請求権が消滅してしまう |
遺留分をめぐるトラブルの多くは、「遺言書の内容」と「相続人どうしの感情のズレ」から生じます。
遺言を書く側も、遺されるご家族も、遺留分というルールを知っておくことが、トラブルを防ぐ第一歩です。
よくあるご質問(FAQ)|遺留分についての素朴なギモン
-
Q. 遺留分がある人全員が必ず請求しないといけないのですか?
A. いいえ、遺留分は「請求するかどうかは本人の自由」です。
たとえば、「兄弟の事情も分かっているので、自分は請求しない」「仲が良いので、話し合いで解決したい」といった選択も可能です。
逆に、誰も請求しなければ、遺言書どおりの内容がそのまま実現されることになります。
-
Q. 遺留分のトラブルは、必ず弁護士に相談しないといけませんか?
A. 金額の計算や手続きは複雑になることが多いため、弁護士への相談は強くおすすめされます。
一方で、「そもそも何から考えればよいか分からない」「不動産の評価はどう見ればいい?」といった段階では、まず不動産会社に相談して、財産の状況を整理するのもひとつの方法です。
センチュリー21イーハルでは、不動産の評価や売却のご相談を通じて、お客さまの相続・遺留分の悩み整理のお手伝いもさせていただいております。
🏁まとめ|遺留分は「最低限の取り分」を守るためのセーフティネット
遺留分とは、法律で定められた相続人の「最低限の取り分」を守るための制度です。
- 配偶者・子ども・直系尊属には遺留分があるが、兄弟姉妹には遺留分がない
- 遺留分全体は「相続財産 × 1/2(または1/3)」というルールで決まる
- 生前贈与も、条件によっては遺留分の計算に含まれることがある
- 遺留分を侵害された場合は「遺留分侵害額請求」でお金の支払いを求める
- 請求期限は、侵害を知った日から1年以内・相続開始から10年以内
相続や贈与を考えるときには、遺留分を踏まえたうえで遺言書を作成したり、事前にご家族で話し合っておくことがとても大切です。
不動産は、相続財産の中でも金額が大きく、「自宅をどうするか」「空き家をどうするか」が遺留分トラブルのきっかけになることも少なくありません。
センチュリー21イーハルでは、小山市をはじめ、栃木市・下野市・茨城県結城市など地域に根ざした視点から、相続や遺留分をふまえた不動産の売却・活用のご相談も承っております。
「うちの場合はどう考えたらいいのかな?」という段階でも構いません。どうぞお気軽にご相談ください。
小さな不動産屋さんならではの、きめ細かな対応で、売却・購入・相続・空き家など、不動産に関するあらゆるお悩みに丁寧にお応えいたします。 まっすぐにお客さまと向き合う宅地建物取引士が、お一人おひとりのご事情に寄り添い、誠実かつ親身にサポートいたします。












